2012年10月9日火曜日

甘美な音の世界

 スティーブ オダさんをご存知でしょうか?
カナダ生まれの日系3世、サロードというインドの古典弦楽器の巨匠と呼ばれる方です。

サロード、というのは「美しい音」という意味らしいです。
25本の弦が張られ、フレットのない鉄板の上の主弦4本を指や爪で押さえ、擦ったり滑らせたりさせて、独特の音を出す事が出来ます。
見ているだけでも、簡単ではない事がよくわかりますが、 だからこそ細かな感情の表現や、情景を描くようなラーガの世界に、何も知識がなくてもすっと入っていく事が出来ます。
スティーブさんのお隣でタブラを叩いていらしゃるのが、28日のWSでも演奏して下さる池田絢子さん。

この日は、スティーブさんのお師匠であった、アリアクバル カーン(Ali Akbar Khan)というインド古典音楽界のドンのような存在であったグルジに捧げるメモリアルコンサートで、サロード奏者、タブラ奏者が他にも集まり、既に一曲一時間近くあるラーガを2曲聴いていたのです。
身体ももそもそしかけて居たのですが、スティーブさんの演奏ではもう惹き込まれるように姿勢がしゃんとし、細胞が振動し、プラーナが駆け巡り、ヴァイブレーションが一気に上がっていくのを感じました。さすが巨匠、そしてそれを感じるのが楽しい。
音は嘘をつかないし、私にはすごくダイレクトに影響があるものなので、いい音を聴くと、無条件に嬉しくなってしまうのです。
スティーブさんが絢子さんにさりげなくリードしつつ音のレッスンを施す余裕、応える絢子さん、ニコニコしながら皆を巻き込んでいくスティーブさん、巻かれっ放しの私達。

私は今まであんまりそういう経験はなかったのですが、
最後、サロード奏者3人集まっての大団円のときに、思わずかなり大きな声で「ああ」と溜め息を漏らしてしまいました。
それは寒い日に露天風呂に浸かったときのような、喉がカラカラのときに一気に冷たいお水を飲み干した後のような、出さずにはいられない声。
でも一番ぴったりなのは、恋人に情熱的に抱き寄せられたときに思わず漏らしてしまうような、もっともっと甘い溜め息のような音。

それを聞いて、サロードのサガールさんも「ああ」と言い、スティーブさんも「ああ」と言い、その場のみんなでも「ああ」と音の官能にやられてしまった夜でした。

音で、こんなにも愛や喜びを感じさせてくれるなんて、弾ける弾けないとかのインスタントな演奏ではないことが少しは伝わりますか?
何十年もかけて学び、練習し、経験し、洗練させるって伝統芸能の世界ならではですよね。本当に素晴らしい。
私もヨガの指導でこんな風に愛や喜びを感じさせられるよう、もっともっと精進しなくては、と思いました。

会場では、ビンディ(インド女性が額につけているキラキラした飾り)を頂いて、眉間につけていたのですが、終わった後別の場所で知り合いの子に、「どうしたの?相当開いてるね〜」と目を丸くさせられました。ほんとどうしちゃったのこの人?って感じで。笑
私のオデコはこうやってどんどん縦に割れていってます。笑

演奏中のスティーブさんも、第三の目の場所にぽこっと穴が開いていました。
演奏後は、つるっとした感じに戻ってしまわれましたけれど。

ヨガを始めるきっかけとして、もっと愛を感じたい、と意識して入られる方は稀でしょうが、結局皆さんそうなのではないでしょうか?
自分の中に眠るその甘美なエネルギー、揺り動かして感じて循環させて世界が愛に満ちますように。
ナーダヨガの夕べでした。
OM


0 件のコメント:

コメントを投稿