2013年2月7日木曜日

インドのお話「ひび割れた水瓶」

確かこんな話です。

「ひび割れた水瓶」  作者不詳 (インド)

インドのとある小さな村にに水汲みを仕事にする少年がいました。
少年は二つの水瓶を左右の肩にかけ、毎日川から水を汲んで丘の上の屋敷までの長い道のりを運びます。
屋敷に付く頃、右側の水瓶には水がいっぱい入っているのですが、左側の水瓶にはヒビが入っているので、いつも水が半分しか残っていませんでした。
ヒビの入った水瓶は、その事をいつも恥ずかしく惨めに思い、少年にも申し訳なさでいっぱいでした。

そしてある日とうとうひび割れた水瓶は、少年に話しかけました。
 「僕は自分が恥ずかしい。そして君に申し訳ない。僕のひび割れのせいで、君がどんなに努力をしても、その努力が報われる事がない。僕はそれが辛い。」
少年はいいました。
「そんなことない、これからお屋敷に帰るまでの、道端の綺麗な花を見るといい。」

天秤棒にぶら下がり、お日様に照らされながらお屋敷までの丘を登っていく時、ひび割れた水瓶は、道ばたの美しい花々を見つけました。

少年は言いました。
「花はどちら側に咲いていたかい?」
ひび割れた水瓶は答えました。
「左側だよ。」
少年は言いました。
「路の左側だけに花が咲いているのは、君から水がこぼれ落ちたおかけだよ。君は毎日花のために水を撒いていたんだ。お屋敷のご主人も、道端にいつも綺麗に花が咲いているのでとても喜んでいらっしゃるんだよ。僕も毎日綺麗な道のりを歩く事が出来てうれしいよ。どうもありがとう。」


ひび割れた水瓶は、それを聞いてはじめて自分を誇らしく思いました。
まさか自分が少年から感謝されるなんて!!
そしてとても幸せな気持ちになりました。


 人は誰でもコンプレックスがあるもの。
誰かと比べて自分が劣っていると感じたり、自分には欠陥があるのだと惨めな気持ちになったり、人生の中ですごく無駄なことばかりしているなと思ってしまうような時、もしかしたら周りの人はそのことを欠点だとは全然思っていないかもしれません。
むしろそれが良かったり。

世の中完璧で効率の良い立派なものばかりだと、道端に自然に花が咲く事さえなくなってしまいます。その花に蝶が蜜を吸いにやってきたり、その蝶を子供が追いかけたり花輪を作って遊んだり。
 私が進んで行く道の途中には、いつも欠陥だらけの私がとりこぼした何かが散らばっていて、それがまた新しいお話に繋がったらいいのかなと思っています。

ひび割れているからこそ役に立つ事がある。
そうに違いない。
OM


 

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